プリンプリンのババロア

怠け男日記 改め プリンプリンのババロア です。よろしくお願いします。

夜行バスに乗ったら「あいのり」みたいな展開に巻き込まれた

10年ほど前、「あいのり」という恋愛バラエティの番組が流行っていた。

一般人から集められた男女がラブワゴンと呼ばれるバスで世界中を旅し、その中での恋愛模様を追う。その旅の中で告白が行われ、カップルが成立すれば二人で帰国し、不成立の場合は振られた側のみ帰国する、というシビアな企画だった。

中高生の間では絶大な人気を博しており、かくいう自分もご多分に漏れず観ていた時期があった。中高時代、恋愛とは無縁のがっかりな青春を送ったような僕でも観ていたぐらいの人気番組だった。



先日、実家に夜行バスで帰る際、「あいのり」を思い出す出来事があった。

夜行バス出発の10分ほど前に乗り込み、寝る準備を進めて出発を待っていると、車外からカップルのケンカが聞こえてきた。


女「嫌や!私、絶対帰らへん!」
男「帰ろうや!乗って!バスはよ乗って!」
女「何時間もお前の隣に座るん嫌やねん!」


バスに乗り込む前にケンカでもしたのだろう、女の子が頑なに乗車を拒んでいた。


男「みゃーちゃん!そんなこと言わんといてや!いいから乗って!」
女「うるさいねん!絶対帰らへんわ!」


バス中に響き渡るほどの大きな声でカップルはケンカを続ける。声の感じからすると、10代後半~20代といったところだと思う。このやりとりを聞いていて、少なくとも30代の落ち着きは感じられなかった。

というか、20代でもこのやりとりをこの声量で行うのはちと恥ずかしい。みゃーちゃんて。


男「ええからはよ乗ってや!頼むわ!」
女「ほんならお前ひとりで帰れや!」
男「そんなん言うたかて、みゃーちゃん一人では帰れへんやろ!」

帰れるわバカ。20代ぐらいの年齢ならさすがに一人でも帰れるだろう。あんまりみゃーちゃんのこと舐めんなよ。


ややみゃーちゃん寄りの意見を僕が持ち始めた頃、すでに時間はバスの出発時刻になっていた。バス会社の乗務員もいよいよ仲裁に入る。

乗務員「他のお客様も待ってらっしゃるので、早く決めてください。どうされますか?」
女「乗らへん!」男「乗ります!」
女「乗らへんって言うてるやろ!」
男「大阪着いたら別れるでもええから!とりあえず乗ろう!な!」


二人の意見は割れたままだ。もう無視して出発してしまえ。

と僕が考え始めたその時、乗務員が今までにない強い語気でカップルに迫った。


乗務員「もうこれ以上は限界です。他のお客様のご迷惑になりますので、今決めてください」


乗務員「お二人でここに残られますか?」


乗務員「それとも……」



乗務員「先に進みますか?」



女「乗らへん!」男「乗ります!」



ラブワゴンは2人を置いて走り出した。ゆずの「超特急」が僕の頭の中で流れ出す。

このあと2人はどうなるのだろうか。仲直りして2人で大阪に帰れるのだろうか。それとも、きっちり別れて別々に帰るのだろうか。その場合、みゃーちゃんは無事に帰れるのだろうか。なんだかんだで心配になっていた。

彼らの分も僕は先へと進む。脱落したふたりのことを想いながら、シートを一番後ろまで倒す。後ろにふたり分の空席ができてよかった。