ドンタコスの思い出
ドンタコスというお菓子がある。
湖池屋から1994年に発売されたロングセラーのスナック菓子だ。
発売当時、僕はまだ保育園に通うような幼児だったのだが、今でもこのフレーズが耳から離れない。
いったいなんなんだ。
ドンタコスったらドンタコス
ドンタコスったらドンタコス
ドンタコスったらドンタコス
ウレシイ!モウスグ!ドンタコスガタベレル~~~!
ドンタコスったらドンタコス
ドンタコスったらドンタコス
いったいなんなんだこの歌詞は。
歌詞に全く意味がない。
何の感情も湧かない。
喜びも、悲しみも、苛立ちも、安らぎも、ありとあらゆる感情がなくなる。
完全なる無。
だけど妙に頭に残る。
ことあるごとに頭の中でリフレインする。
中高の部活動に励んでいたときも、
浪人して必死に勉強して臨んだ大学受験のときも、
好きだった女の子に振られたときも、
面接で失敗してお祈りをたくさんもらっていたときも。
いつも僕の頭の中ではドンタコスおじさんが踊っていた。
「ウレシイ!モウスグ!ドンタコスガタベレル~~~!」
とツーステップを踏んでいた。
この曲が生まれた経緯を想像する。
当時としてはあまりなかったかもしれない、トルティアチップスというジャンル。
湖池屋はカラムーチョだけじゃない、という期待を背負った自信作。
今よりももっとテレビの力が強かった時代、テレビCMの投入はまさにお菓子界に一石を投じる大きな賭けだったのかもしれない。
絶対に失敗できないCMづくり。
湖池屋は音楽の力で商品を訴求することにした。
社員「作曲家さん、ドンタコスは社運をかけたお菓子なんです。このお菓子の成否が我が社の運命を分けると言っても過言ではありません!絶対に成功させたいんです。何卒、なにとぞ素晴らしい楽曲を作ってください!よろしくお願いします!」
作曲家「わかりました。自分にどこまでできるかわかりませんが、このお菓子をひとくち食べたときの衝撃、感動を全国に届けられるよう精一杯頑張ります。」
~数週間後~
重役「それで、CMに使う楽曲はどうなったのかね?」
社員「つい先程、作曲家さんからデモテープが届きました。なんでも相当の自信作だそうです。一度聴いたら頭から離れないとか。それでは再生してみましょう。」
スイッチオン
ドンタコスッタラドンタコス ドンタコスッタラドンタコス
ドンタコスッタラドンタコス ドンタコスッタラドンタコス
ウレシイ! モウスグ! ドンタコスガタベレル~~!
ドンタコスッタラドンタコス ドンタコスッタラドンタコス
ドンタコスッタラドンタコス ドンタコスッタラドンタコス
その後、ドンタコスは現在に至るまでロングセラーとなる人気商品になった。
長い年月が過ぎ、CMが放送されなくなった今も、僕達の世代の頭の中でドンタコスおじさんは踊り続けている。
次回、「はごろもフーズ シャキッとコーンの思い出」に続く